矯正治療で顔が変わる

歯並びを変えると良くも悪くも顔が変化する。

皆さんは矯正治療で顔が変化すると言う事実をご存知ですか?

矯正治療できれいな歯並びになって顔だちもよくなるかと思いきや
頬がこけてしまい・・
などと言うお嘆きをよくネット上の投稿で見かけます。

4抜歯をするとなぜ顔が変わってしまうのか考えたいと思います。

4抜歯をしてもあまり顔が変わらない方もいます。

逆に極端に頬がこけてしまう方もいます。

抜歯矯正をされている先生は
よく
抜歯をしないと歯が口から飛び出してゴリラのような顔になる
と脅されますが
うちの症例を見ていただければわかるように
抜かなくても顔がおかしくなることはありません。

どう変わるかは治療次第

もっとも他の非抜歯矯正ではカッパのような顔になった人を観測していますから
何が何でも非抜歯ならいいとも言えないようです。

 

さて

それでは次の写真をご覧ください。

抜歯矯正後の患者さんの口腔内写真です。

素晴らしい仕上がりです。

それもそのはず

この方は某歯科大学の矯正科で

れっきとした矯正専門医が治療した患者さんです。

これはスケルタルダイアグラムと言い

私たちが機能矯正の診断をするときの基本的考え方を示しています。

作ったのはヨシ・ジェファーソンというアメリカの機能矯正医の先生です。

本来はジェファーソンアナリシスという分析方法の一部なのですが

この図は普遍的に利用できるもので

ビムラー分析の応用版なので矛盾しているところもありません。

機能矯正では最初の分析でこのスケルタルタイプを見極めて

治療方針を決めます。

左上のコマのものが正常骨格

上の矢印が上あごの位置あるいは大きさ

下の矢印が下あごの位置あるいは大きさです。

上が出ていればいわゆる出っ歯ですが

出っ歯にも3種類のバリエーションがあるのがわかると思います。

このバリエーションにより治し方が全く異なるわけです。

同じ治し方をしていてもうまくいく場合と行かないばあいがあるのは

このバリエーションを考慮せず同じ手法をとるから起こるとも言えます。

さきほどのかたではありませんが

抜歯矯正を終了した方の典型的なお顔です。

悪いとは言いませんが

なんというかこの深いほうれい線は何なんでしょう?

ほうれい線のお悩みは40代以降に発生するものですが

まだ肌のの色つやの良い20台で起こってしまうとじたいは深刻です。

ま、若いうちは皮ふのハリでなんとかなるものではありますか。

さて

さっきは良いかみ合わせと言いましたが

もう一度歯の写真をご覧ください

犬歯の頭そしてその後ろの歯が

ほとんど平らになってしまっていると思いませんか?

上下とも奥の歯が

極端に擦り減っています。

左側の上の歯列の向かって右側の奥から二番目の歯

実はセラミックのインレー(歯の詰め物)がしてあるのですが

何回やっても欠けてしまうとの事。

あきらかに顎運動と

歯の咬みあわせが食い違っているのです。

歯がどんどん擦り減ってしまってセラミックインレーも割れてしまうし

歯の外側のエナメル質が抜けしまって中の象牙質が出始めてしまっています。

これは50代の患者さんではよく見られることですが

この患者さんはまだ20代の後半です。

たいてい矯正の術後写真は口腔内だけで

お顔の写真が出ることはありません。

出せないのです。

また

撮影するのはワイヤーを外したその日に撮るので

この写真のようにいろいろな不具合が起きる前に撮ってあるのです。

私と矯正歯科との出会い

ここで私が矯正の研究を始めたきっかけをお話ししましょう。

以前も他のブログで書きましたが

私は歯医者の技術の中で個々の歯をしっかり治す

保存と言う分野が好きで

大学の保存修復科と言うところに研修生として残りました。

そこでは来る日も来る日も

歯を削ったり詰めたりしてるわけです。

個々の歯をしっかり治して積み上げて行けば

自ずとその人なりの咬みあわせになるだろう

と言うのが当時の私の考え方でした。

矯正治療はそもそもその人が成長の過程で獲得した歯と顎運動の調和を崩してしまうので

あまりやるものじゃないだろう

と考えていたのです。

 

ですからその頃は

どうしても矯正がやりたいと言う患者さんは

矯正医に紹介していたのです。

ところがある日、変なことに気が着きました。

矯正医に送った患者さんが誰も返信されて来ないのです。

まあそのうち矯正治療完了の報告とともに帰ってくるのだろうと思っていましたが

ついに矯正に送った患者さんが返信になることはありませんでした。

また、臨床を重ねるうちに

抜歯矯正をした患者さんに

いろいろな不具合が生じていることにも気が着き始めます。

要するに返信しないのではなくて

できないのだと思うようになりました。

 

その一番の原因は

顔だちの変化でしょう。

 

顔だちの変化とスケルタルダイアグラム

前回書いたグラフ

ジェファーソンアナリシスから作られた

スケルタルダイアグラムを思い出してください。

上の分析図はビムラーの分析のトレーシング図です。

日本人の分析をすると最も多い典型的な

上下顎劣成長つまりBRの分析結果となります。

キモは右側の顔全面に一本上から下にまっすぐな線が引いてありますが

この線をマクナマララインと言い上顎と下顎の

位置関係を調べるために使っています。

上顎の前縁かこの線上にあれば上顎の位置は正常ですが

この方のようにずっと後方にある場合は成長に何らかの問題があるということです。

このとき上顎の値が基準線より大きければ

つまりタイプⅡAとタイプBPの場合は抜いても顔の形が大きく崩れることはありません。

この二つのタイプは矯正専門医が説明するように

拡大で歯を並べようとすれば

ゴリラ顔になります。この二つはアングロサクソンやアフリカ系の方に多く見られます。

日本人にはほぼ見られません。

日本人に多いのは子の症例の方のようなBRです。

 

成長したら育つんじゃないの、と思うかもしれませんが

上顎骨は4歳時点で成長の70%が終了しているので

成長期になって上顎が大きくなることはありません。

成長は下顎で起こるので

上顎が小さければ下顎の成長も抑制され

上下顎劣勢長つまりBRになるか

下顎だけが成長して反対咬合になるか

下顎は成長してかみ合わないので下方向に下顎が伸びてしまって

オープンバイトになる

だいたいこのような選択肢をとることになります。

ではBRの人を歯を抜いたらどうななるかお分かりですか?

もともと上顎は小さいのですから抜いてしまえばさらに小さくなります。

小さいために問題が発生しているのにそれをさらに悪化させる方向にもっていってしまえば

結果は最悪です。

 

それでは何が悪いのかというと

抜歯矯正は白人のための技術である

考えてみてください。

もともと抜歯矯正はアメリカで生まれました。

アメリカにはいろいろな人種がいますが

矯正治療が受けられるのは裕福な白人だけでしたから

抜歯矯正とはそもそも彼らのための技術なのです。

上の顎が基準を超えて大きければ歯を抜くのもありと思われます。

(いろいろ問題は発生しているみたいですが)

しかしそもそもBRのように上の顎が小さければ

歯を抜いてしまえばもっと小さくなってしまいます。

すると症例の方のように深い豊齢線と頬こけが発生することになります。

つまり抜歯をするから変な顔になるのではなくて

抜く適応症ではないから抜いたら変な顔になるのです。

4抜歯をするのがいけないのではなく

4抜歯の適応ではない人に抜歯をしてはいけないのです。

そして4抜歯の適応の方は日本人ではとても少ないのです。

 

また所謂非抜歯矯正で6を後ろにずらす治療をする方もいますが

これもBRでは悪化する恐れがあります。

 

抜く適応ではない方を抜いてしまうとこのようになる恐れがあります。

つまりはすべて診断しだい

診断で抜いてはいけない

と出ているのに抜いてしまうからおかしくなる

正しい診断をしてそれにしだがって治療をすすめれば

良い治療結果が出せるのです。

ご相談の時に必ず言いますが

分析はその後の治療方法を決定するための重要なものです。

矯正治療で遭難しないために

そして

山で遭難しているときに

自分が歩いている道が登っているのか下っているのか

基本的なことを確実に把握するために

そしてますます深い山に迷い込んでしまわないために診断を正しく行わなければなりません。

冒頭矯正治療をすれば

顔が変化すると申しましたが

それは当然のことで

なぜなら顔の下半分を形作っているのは歯だからです。

矯正治療をしすれば当然お顔は変化します。

歯並びは悪いが明るいいい表情

治療後、どう思われますか?

どちらがいいかは主観的な問題ですが

治療が終わって良くなっている方は

治療をしてとてもよかったと言ってくださいます。

機能矯正が良いと思うのは

良い顔立ちには良い歯列が裏打ちをしている

良い顔立ちにはム必ず正しい歯列が裏打ちをしている。

私が機能矯正がいい治療だと確信を持って進めているのは

たくさんの患者さんで確認しているこの事実があるからに他なりません。