アライナー矯正(2)

アライナー矯正について

さて前回の続きです。

通常機能矯正で治療が終了し、あとは歯が並べばよいと言うところまで来たらバイオプログレッシブメソッドで歯列矯正をしていきます。

ところが、さあ後半に入りましょうと言う段になってブラケットワイヤーを絶対使いたくないという要望をだされたのです。

これは少々参りました。バイオプログレッシブは理論はともかく実践面ではブラケットとワイヤーを使うからです。

機能矯正装置は歯をきれいに並べきる能力は持ち合わせていません。

ごくまれに機能矯正装置を使っているうちに歯がきれいに並ぶこともあります。

ただこれはとてもラッキーなケースでとこにこの人のように重篤な歯列不正を伴っていた場合、これをきれいに仕上げる能力のある装置はありません。

ブラケットワイヤーを使わないで歯列を整える能力のある矯正技法。
可能性のあるのはアライナー矯正でした。

アライナー矯正とは

透明の熱可塑性シートを模型上で歯をセットアップした状態で制作して、矯正の進捗とともにアライナーを交換していくというものです。

古いところでは「インビザライン」というものがありドクターにマニアのような方がいるようです。

ただこれは開発当初なかなかうまく行かなかったようでAAOの機関紙に供給会社から
「ケースの見極めをしっかりやってください。」
という文書が掲載れているのを目にしたことがあります。

「インビザライン」の特徴は初診のときにひとつ印象を取るだけで、完治までのアライナーをすべて制作して一括納品してくるという点にあります。

その間の診断や治療途上のセットアップはコンピューター上で行うのですが、その作業をやっているのは会社のオペレーターで必ずしも歯科医師ではないようです。

インビザラインを熱心にやられている先生は、この途中の経過を詳細に検討し細かい修正を出して納得がいってから制作にからせるそうです。

インビザラインは当院では対応していません。

この方法の欠点はあまり込み入ったケースをやると途中で口の中の状態とアライナーが合わなくなってしまうと言う事があります。

その場合はその時点からまた設計をやり直すことになります。

最近はアライナーブームであちこちの会社が出していますが、理屈は一緒ではに一定のテンションをかけ続ければ動くというものです。

ですから歯列が乱れている人に正しい歯列のテンプレートをかぶせれば、正しい歯列になるというものでその時に歯が動くスペースをどうやって作るか、アライナーの材質や一回に動かす量はどれくらいにするか、また動かしていくプロセスは一括でやってしまうか、都度診断でやっていくかというようなことで各社の違いが出ています。

当院で使っているアライナー矯正の一つがアソアライナーというものです。

その名の通り矯正技工所の大手ASOインターナショナルが開発したもので、開発はオーストラリアの矯正の大家デレク・マホーニー先生がやられたそうで、私はマホーニー先生ご本人のセミナーでこのシステムの勉強をしました。

このシステムの特徴は、一つのステップを終了した後印象を取りなおして都度診断をして次のアライナーを制作する。それを重ねて行って治癒に導くというものです。

先ほどのインビザラインが初診一回の印象で、完治まですべてのアライナーを制作してしまうのに対し手間はかかりますが、インビザラインが途中でもくろみ通りに治らなかったときに行き詰ってしまうのに対し、そのような失敗は起こらないという利点もあります。

ただし治療にかかった時点では、何枚のアライナーで治るかが見通せずということは料金がはっきり出せないという欠点があります。

当院でアソアライナーをやるときは都度払いにしていただいて、患者さんの経済事情と治り方を図りながら治療をするという手法をとっています。

軽い不正咬合の場合は廉価に治せるという利点があります。

 

さて、今お話ししている患者さんの場合、ここまで機能矯正で下準備はでき、あとは歯列を整えるところまで来ていましたが、ブラケットを着けるのがいやだと言う事でアライナー矯正を選択することとしました。

今回はインビザラインアソアライナーのお話をしましたが、次回いよいよケースに戻って症例を見ながら進めていきす。